柳ノヨウナモノ
雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
東ニ風ガ吹ケバ
ソレニ倣イ
西ニ微風ガ吹ケバ
枝葉ヲ揺ラシ
南ニ冷タイ風ガ吹ケバ
木ノ陰ニ居ル者ヲ寒サカラ守リ
北ニ強風ガ吹ケバ
根ヲ折ラレヌヨウニ耐エ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフ柳ノヨウナモノニ
ワタシハナリタイ
あ と が き
柳のように、何ものにも心を惑わされないような、そんな強い人間になりたい。
2011年6月17日
ある会話
「年末年始は忘年会や新年会があるので、飲酒を勧められる機会も多いでしょうが、誘惑に負けないようにしましょう。それでは皆さんの成功を祈って、カンパーイ」
司会者の音頭に合わせ、参加者達が手に持っていた紙コップを掲げた。
「おい、おい」
後ろからの声に、会場から立ち去ろうとしていた男は振り返った。
「やあ・・・」
声をかけられた男がやや力なく応えると、声をかけた男は両手に持っていた紙コップの片方を差し出した。
「久し振りじゃないか。数ヶ月振りか? ほら、“鉄人”さんの分」
「有難う、“兎”さん」
二人が立つ廊下には、会場からのさんざめきが漏れ聞こえる。
「最近、会に参加してないみたいだったから、どうしているのかと思ってたんだ」
と、“兎”が言うと、“兎”から紙コップを受け取った“鉄人”は、
「仕事が忙しくてね」
そう言うなり、紙コップに入れられたジュースを一気に飲んだ。
「そう言えば、“兎”さんは断酒期間が遂に一年になったから、賞をもらったそうだね。良かったじゃないか」
「有難う。一年も断てるなんて嬉しいよ」
“兎”の言葉に、“鉄人”は微笑んだ。
「自分は未だに酒断ち出来てないから、賞なんてもらったことないや」
力なく笑う“鉄人”を見て、“兎”はやや戸惑った表情を浮かべた。
「“鉄人”さんは、自分よりずっと長く会に参加しているじゃないか。断酒一年越えの賞なんて、結局のところ、自己申告によるものだし・・・」
徐々に声が小さくなる“兎”から視線を逸らした“鉄人”は、
「また、年が終わるんだな」
と、呟いた。
「そうだね、今年も彼女が出来なかった」
“兎”のぼやきに“鉄人”は笑った。
「俺も出来なかったよ。もう少し、この腹が凹んでくれればなぁ」
“鉄人”はそう自虐めいた言葉を言いながら、自分の腹を撫でた。
会場から、参加者たちが手を打ち鳴らす音が聞こえる。
「年始から、また頑張らなきゃな」
“鉄人”のその言葉に、“兎”は小さく頷いた。
あ と が き
自室の大掃除をやっていたら、断酒会の小ネタを書いたメモが出てきたので書きました。
友人が自分よりも先に進んでいることを知ると、嫉妬心が出てきて惨めな気持ちになることもあるけれど、友人の前では何事も無いように振る舞えるようになりました。
昔だったら耐えきれなくって暫く友人から離れることもあったから、大人になったのかと自惚れたり思わなかったり。
嗚呼、もうすぐ一年が終わる・・・。
音を立てて大晦日が近付いてくるうう!
2011年12月30日